焼入れ水の温度を盗むエピソードとは

日本刀の焼入れの冷却剤として、水が使われているそうです。
一時期、軍刀製作においては、冷却剤に鉱油が使われていたこともあるそうです。水温というのは、備前伝や相州伝などの流派や刀匠によっても違ってくるそうです。備前伝ではだいたい室温程度の水だそうです。相州伝では室温よりも少し高めのお湯だそうです。とある備前伝の刀匠は「20℃〜30℃」だそうです。冷却水の温度というのは、刀身の焼入れ温度と同様に、焼入れの結果に大きく影響するとても重要な要素だそうです。日本刀の焼入れに関しては、このようなエピソードが流布しているそうです。「弟子が、一子相伝の秘伝とされる焼入れ水の温度を盗み取るために水槽に手を入れたら、師匠に腕を切り落とされた」実話かどうかもわからない怖い話ですが、このようなエピソードが語られるほど、焼入れの冷却温度というのは重要ということのようです。焼入れのできばえというのは、水の温度だけではないというのは当たり前ですが、技術をいろいろと語るよりも「水温を盗む」という話はとてもわかり易く焼入れ工程の高度な伝統技術を表しているともいえそうです。焼入れ温度、冷却水の温度はもちろん、素材である玉鋼の特性とそれらの造り込み、土置きの仕方、焼刃土の厚さや伝熱特性など、多くの要素によって決まってくるかと思います。
材料の特性の異なる鋼を組み合わせるなど、研究に研究を重ねた結果ということもいえると思います。また現代のような科学的検証をするまでもなく伝統技術はそれらを利用して刀作りをしているというのも驚くべきことだと思います。強度、靭性の両立を高いレベルで実現した日本刀を作るために、刀匠たちのとてつもない才能と努力が必要な気がします。


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