武士と日本刀との関係性

 武士と言えば日本刀を連想するくらい、分かち難く結びついている両者ですが、そもそも武士が2本の刀を帯刀する文化は、江戸時代以降に確立したものです。それよりも前の時代では、合戦の褒美は専ら槍だったことからも分かるように、必ずしも武器の主役ではありませんでした。
 日本刀についてはまだまだ誤解していることがあるのかもしれません。世間が日本刀に関心を持ち始めたのは最近のことですし、まだまだよく知らない人の方が多いでしょう。日本刀はミステリアスで、様々な捉え方が出来ます。武器としての日本刀、神器としての日本刀、魂としての日本刀はいずれも正しい形容でしょう。不思議な力でもって権威であり続けたこの日本刀について、ここではもう少し深く探ってみたいと思います。
 平和な現代にあって中々想像できないのですが、人類の歴史の大半は戦争と共にあったと言えます。日本刀もそうした歴史的背景と無縁ではありません。日本に限定すれば、江戸時代は比較的平和な時代でしたが、それまでは戦乱が続きました。そうした時代に存在感を放ったのが日本刀だったのです。日本刀は武器として、また権威として、武士の心の拠り所となりましたが、江戸時代に入ると治世が安定し、日本刀は専ら芸術品と見做されるようになりました。しかし他の美術品とは異なり、その美が絶えず磨かれていったのは驚嘆すべき事実です。
 時代の変化に合わせて日本刀の役割や存在感も変化しましたが、それは同時に日本人の心性が変化してきたことをも意味します。日本刀をよく知ることが出来れば、日本人の特性についても学ぶことが出来るはずです。


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