日本刀と槍

 13世紀までは弓が戦場の主役で、刀がそれに続きました。しかし14世紀に入ると大きく変化します。合戦の激しさが増す中で、日本刀の使用頻度が低下し、槍が歩兵の武器としては主流となりました。弓のような投射武器は依然使用されたものの、日本刀は戦場から外されるようになったのです。現代人は刀を用いた一騎打ちをイメージしがちですが、実際は弓や槍が武器の中心だったということです。こうして日本刀は実戦で役に立たないものとして扱われるようになりましたが、他方、文化的にはその後も重視され続けました。敵兵と遭遇することを太刀打ちと言ったように、武士の心には日本刀が離れがたく眠っていたのです。
 日本刀は実戦であまり使用されなかったことはご説明しましたが、では稀に用いられるのはどのような場面だったのでしょうか。日本刀の特徴は、硬いながらも柔軟な性質がある点で、一言で言えば丈夫でした。武士は合戦で鎧を着用していたため、簡単に「斬る」ことは叶わず、日本刀の丈夫さを活かして「突き刺す」のが使い方の主流だったと考えられています。
 当時の刀傷の記録から分かるのは、刀には様々な種類があったということです。斬るための刀もあれば、重くて鋭くないことから、兜に打ち付けるための刀もありました。刀傷は額頭頂部に多く、頭蓋骨が破損しているものもあったようです。この事実から、刀を相手の頭に打ち付けて攻撃したことが読み取れます。また、何度も斬られて戦い続けた馬や兵士の逸話が残っており、刀による切り傷が致命傷になったケースは少なかったであろうことが分かります。刀は背後から頭に打ち付けるような形で用いられたり、緊急時に使われたりしたのです。


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