研磨

鍛冶屋と研師は職業としてどちらが古いか?答えは研師である。石を石で磨く磨製石器時代が二万年くらいつづいた。銅が発見され銅剣がつくられた。秦の始皇の銅剣には強度を増すため万身にクロームメッキがほどこされている。二千年前にも、そのような技術があったのだ。正倉院に蔵されている幾振かの蕨手刀も、よく研ぎ磨かれ、光り輝いて保存されていている。いまの世の研ぎは、すでに完成していたことがわかる。

だが、研ぎ方は違う。奈良時代から江戸時代まで差込研ぎ。明治以降から金肌研ぎになった。差込研ぎとは、研ぎの最終段階で、刃文を見えやすくするために黒く光った部分を落とす作業の「刃取り」をしない。するのが金肌研ぎ。金肌とは、鉄を熱して叩いたときに飛び散る粉を集め、乳鉢で何日もこすり細かくしたもの。何日も火で焼き、大変根気のいる作業。これが研ぎ師の秘伝といわれる。

この金肌で万身をこすると全体的に真っ黒になり、どこが刃文だかわからなくなるので刃取りをする。差込研ぎより刀身がよく光る。明治初年に書かれた本に「最近、金肌研ぎと申し、ギラギラ光り、いやらしき研ぎあり」と書かれているから、いまと違って受けは良くなかったようだ。昨今の研ぎの注文比率は金肌研ぎがほとんどで差込研ぎは五パーセントという。

 

 


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